今日も社会福祉士国家試験の合格に向けて一緒に勉強していきましょう!今回のテーマは、「高齢者福祉制度の発展過程をマスターしよう!」です。では、授業を始めていきましょう。

*今回の記事の構成として、初めに高齢者福祉制度の発展過程に関する基本問題を出題します。その後、問題の解答解説を行い、理解が深められる構成になっています。
問)次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1. 老人福祉法制定前の施策として、生活保護法に基づく特別養護老人ホームでの保護が実施されていた。
2.65歳以上の者に対する健康診査事業は、1963年の老人福祉法制定により法定化された。
3.1973年に実施された老人医療費支給制度において、60歳以上の高齢者について医療費負担が無料となった。
4.高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略(ゴールドプラン)の中で、老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務付けられた。
5.老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため老人福祉法が制定された。
答え)2.65歳以上の者に対する健康診査事業は1963年の老人福祉法制定により法定化された。

なので、ここでは高齢者福祉制度の変遷を一つ一つわかりやすく解説していきます。

1限目:養護老人ホーム・特別養護老人ホームの違い
まず、「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」の違いについての問題です。
選択肢「1」に注目してください。
1.老人福祉法制定前の施策として、生活保護法に基づく特別養護老人ホームでの保護が実施されていた。
この選択肢は、不正解です。
ポイントになるのは、「特別養護老人ホーム」という単語です。
まず、「特別養護老人ホームがどのような施設なのか?」について、簡単に解説しましょう。
特別養護老人ホームには、以下の3点の特徴があります。
① 原則として、要介護3以上の高齢者でなければ入れない。
② 公的な施設のため、比較的安価に入居することができる。
③ 看取り対応を行える施設が多く、終の棲家となりうる。

なので、特別養護老人ホームは、もともと生活保護法に規定されていないんです。

一方で、「養護老人ホーム」とはいったいどのような施設なのでしょうか。養護老人ホームは、経済的に困窮している高齢者を受け入れるための施設です。
そのため、特別養護老人ホームのように介護施設という扱いはしません。
*一部、介護が必要な人は介護を受けることができます。
そして、養護老人ホームの一番の目的は、入居者が自立した生活が送れるように支援することにあります。そのため、入居者の財政面についてのアドバイスをしばしば行うことがあります。
👉参考:【わかりやすく】養護老人ホームとは何を目的とした施設なのか?



そして、1963年に、養護老人ホームが「生活保護法」から「老人福祉法」に規定されました。
ここまでを一旦、整理すると次のようになります。
・特別養護老人ホーム→心身の障害が入所要件となる介護施設
・養護老人ホーム→経済的に困窮している高齢者を対象にしている施設
※養護老人ホームの前身は「養老施設」と呼ばれ、生活保護法に規定されていました。
2限目:健康診査事業のはじまり
では次に、健康診査事業について見ていきましょう。
選択肢の「2」に注目してください。
2. 65歳以上の者に対する健康診査事業は1963年の老人福祉法制定により法定化された。
この選択肢は、正解です。
皆さん、「健康診査事業」と言われてピンときますか?おそらく、皆さんの多くは、「健康診断」や「健診」といった表現の方が聞き覚えがあるかもしれません。じつは、これらは「健康診査事業」のものです。
そして、社会福祉士国家試験では、「65歳以上の者に対する健康診査事業がいつ始まったのか?」といった問題が出題されます。また、65歳以上の者に対する健康診査事業が始まったのは「1963年」です。
さらに皆さんに、ぜひ知っておいてもらいたいことがあります。それは、「1963年に何が行われたのか?」ということです。
じつは、1963年は「老人福祉法」と呼ばれる法律が制定した年です。
覚え方
ムサ(63年)サビ!老人福祉法


3限目:70歳以上の老人医療費の無償化
現代社会では考えにくいことですが、高齢者に対する医療費が全額無料になったことがありました。
選択肢の「2」に注目してください。
3. 1973年に実施された老人医療費支給制度において、60歳以上の高齢者について医療費負担が無料となった。
この選択肢は、不正解です。
たしかに、1973年に老人医療費の無償化が行われたのは事実です。
そのため、この選択肢を正解だと考えてしまう方は多いと思います。しかし、老人医療費の無償化の対象になったのは、「60歳以上」ではなく「70歳以上」なんです。
覚え方
「19(73)年」と「(70歳)以上」
*丸かっこで囲んだ数字が近いと覚えるのが良いかもしれません。

そうやって覚えれば、“老人医療費の無償化になった時期”と“対象年齢”が一発だね!

4限目:老人保健福祉計画が始まった年
では、次に老人保健福祉計画が始まった年について確認していきましょう。
選択肢の「4」に注目してください。
4.高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略(ゴールドプラン)の中で、老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務付けられた。
この選択肢は、不正解です。
老人保健福祉計画が始まったのは、1990年に改正された老人福祉法、老人保健法において義務付けられました。なぜか、分からないんですが、社会福祉士国家試験の問題では「1989年のゴールドプランが制定された年に、老人保健福祉計画の作成が義務付けられた。」と、ひっかけてくるんです。。。
なので、皆さんは間違いないでくださいね!



計画があって、始めて各々の都道府県や市町村は施策を講じられるということです。

5限目:老人保健法が制定した理由
最後に、選択肢の「5」に注目してください。
5.老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため老人福祉法が制定された。
この選択肢は、不正解です。
皆さん、1973年にどういう制度が成立したんでしたっけ?
そうですね。1973年に、70歳以上の老人医療費の無償化が行われたんでした。ですが、この施策は、そんなに長く続きませんでした。理由はいくつかあるのですが、そのうちの一つに「財政のひっ迫」がありました。
じつは、老人医療費が無償化になった途端に医療を利用する高齢者が急激に増えてしまったんです。
それにより、老人医療費の無償化の継続が厳しくなったため、一部、高齢者にも自己負担をしてもらう仕組みを整えました。
そして、そのきっかけになった法律が、1982年に成立した「老人保健法」です。これにより老人医療費でも、自己負担の仕組みが導入され、公費の他に各医療保険者からの拠出金から支える仕組みが導入されるようになりました。


まとめ
最後に、今回のテーマである「高齢者福祉制度の発展過程をマスターしよう!」のおさらいをしましょう!
1.老人福祉法制定前の施策として生活保護法に基づく養護老人ホームでの保護が実施されていた。
2.65歳以上の者に対する健康診査事業は1963年の老人福祉法制定により法定化された。
3.1973年に実施された老人医療費支給制度において70歳以上の高齢者について医療費負担が無料となった。
4.1990年の老人福祉法・老人保健法の改正で、老人保健福祉計画の策定が各地方自治体に義務付けられた。
5.老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため老人保健法が制定された。


今回出てきた覚え方一覧
①「ムサ(63年)サビ!老人福祉法」
*1963年に、老人福祉法を制定した。
②「(65)歳以上」と「19(63)年」という数字が近い!
*65歳以上の者に対する健康診査事業は1963年の老人福祉法制定により法定化された。
③「19(73)年」と「(70歳)以上」と、丸かっこで囲んだ数字が近い!
*1973年に実施された老人医療費支給制度において70歳以上の高齢者について医療費負担が無料となった。
福祉イノベーションズ大学では、社会福祉士国家試験の合格に向けて試験に出る箇所を中心に、情報発信をしています。
「参考書や問題集を解いただけではわからない…。」という方は、今後も参考にしてください!
今回の授業は、以上です!
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