今日も社会福祉士国家試験の合格に向けて一緒に勉強していきましょう!今回のテーマは、「集団浅慮が働いた事件とは?社会的手抜き、社会的抑制について解説」です。では、授業を始めていきましょう。
*今回の記事の構成として、初めに集団に働く作用に関する基本問題を出題します。その後、問題の解答解説を行い、理解が深められる構成になっています。
問)次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1.チームの業績は、メンバーによる努力の投入量の総和とほぼ同じになる。
2.遂行するタスクが多様なスキルや判断を必要とする場合には、個人よりもチームの方が高い業績を上げることができる。
3.リーダーを中心にまとまりのよい集団では、集団浅慮は発生しない。
4.社会的手抜きは、集団の作業においては発生しない。
5.社会的抑制は、単純な課題を行うときに発生する。
答え)2.遂行するタスクが多様なスキルや判断を必要とする場合には、個人よりもチームの方が高い業績を上げることができる。
なので今回は、集団に働く心理作用についてしっかり学習しておきましょう。
1限目:チームの業績を決める3つの要因
まずチームの業績は、どのように決まるのか?について確認しておきましょう。
選択肢の「1」に注目してください。
1.チームの業績は、メンバーによる努力の投入量の総和とほぼ同じになる。
この選択肢は、不正解です。
では、この選択肢の何が違うのでしょうか。一見すると、正しそうに見えますよね?
まず前提として、チームの業績は単にメンバーの努力といった、「1つの軸」では決まらないということを意識しておきましょう。またチームの業績には、以下の3点が大きく関わってきます。
チームの業績のために必要なもの
①目標達成の明確な道筋
②戦略戦略を実現できる人材
③チームワークの強さ
特に、目標達成の明確な道筋は重要です。
例えば、プロのサッカーチームが、自分たちのチームの勝率を上げるために、野球の練習をしていたらどうでしょうか。これって、おかしいですよね。
プロのサッカーチームであれば、サッカーの練習をしなければ意味がありません。つまり、目標達成の明確な道筋を見誤ると、いくら頑張っても大きな業績は出せないということを意味します。
また、そういった目標達成の明確な道筋を描ける人材も必要ですね。
2限目:チームでの活動が効果的な場面
次に、チームでの活動がどういういった場面で効果的なのかについて見ていきましょう。
選択肢の「2」に注目してください。
2.遂行するタスクが多様なスキルや判断を必要とする場合には、個人よりもチームの方が高い業績を上げることができる。
この選択肢は、正解です。
遂行するタスクが複雑な場合には、それぞれの専門性を持つメンバーがチームを組み、行っていく方が高い業績を上げることができます。まさに、福祉の専門職はこの考え方を重視しなければなりません。
例えば、骨折をしてしまった高齢者の方がいます。
この時、社会福祉士だけで、この高齢者の支援をすすめるのは難しいです。おそらく、骨折をしてしまった高齢者に対する支援といえば、次のような専門職との連携が必要です。
①骨折した高齢者に対する支援
②骨折の状態を診療する→医師の役割
③骨折した画像をとる→検査技師の役割
④リハビリを行う→理学療法士の役割
⑤退院の調整を行う→看護師・社会福祉士の役割
⑥介護保険サービスへつなげる→介護支援専門員の役割
また、それぞれの役割を実行できるのは、それぞれの専門職であり立場も違えば、専門も違います。
だからこそ、遂行するタスクが複雑な場合には、それぞれの専門性を持つメンバーがチームを組み、行っていく方が高い業績を上げることができるのです。
3限目:集団浅慮が起こると間違った選択をしてしまう現状
次に、集団浅慮についてわかりやすく解説していきます。
選択肢よ「3」に注目してください。
3.リーダーを中心にまとまりのよい集団では、集団浅慮は発生しない。
この選択肢は、不正解です。
そもそも、集団浅慮とはどのような考え方なのでしょうか。
集団浅慮は、米国の社会心理学者ジャニスが提唱した概念です。
*余談ですが、集団浅慮の読み方は「しゅうだんせんりょ」と読みます。
集団浅慮とは
集団で議論することによって、かえって深く物事を考えずに、決定がなされてしまう現象のことをいいます。
ここで、集団浅慮の具体例として有名なNASAのスペースシャトル「チャレンジャー号」の事件をご紹介しましょう。
皆さん、NASAとはご存知ですか。NASAは、アメリカ航空宇宙局のことです。
またNASAは、宇宙事業を実行する人たちということもあり、非常に優秀な人たちが集まっているという特徴があります。そのため、一般的な人に比べて、平均以上に合理的な考え方のできる集団だと考えてよいでしょう。
そして、この前提が重要です。なぜなら、集団浅慮の特徴として、優秀な人間の集まりだとしても個人の知能に関係なく起きてしまうという特徴があるからです。
じつは、1986年1月28日、スペースシャトル「チャレンジャー号」が宇宙に向けて発射し、その72秒後に爆発事故が発生したということがありました。この時、乗組員の7名は全員が一瞬で帰らぬ人となりました。
ただ、スペースシャトルの発射前に、打ち上げを延期するように主張するグループがあったと言われています。しかし、NASAは、この警告を打ち上げ関係のスタッフに伝えていなかったとされています。注目すべきは、その理由です。
チャレンジャー号の打ち上げは、初めて一般人が宇宙に行くということで、全世界から注目が集まっていました。そのため、NASAは、打ち上げ延期の警告よりも、計画通りに進めることが優先であると職員の多くの意見が決めてしまったのです。つまり、NASAの職員の多くの意見が、反対意見を潰すという形になり、事故を招いたとされているのです。
4限目:社会的手抜は複雑な作業をする時に発生する現象
次に、社会的手抜きについてわかりやすく解説していきます。
選択肢の「4」に注目してください。
4.社会的手抜きは、集団の作業においては発生しない。
この選択肢は、不正解です。
そもそも、社会的手抜きとは何なのでしょうか。
社会的手抜きとは
単独で作業する時よりも集団で作業する時の方が一人あたりの作業量が低下する現象のことを言います。
例えば、会社や学校などでの会議がその一例です。おそらく、多くの人が会議に参加するメンバーの数が多いと、「自分が話さなくても誰かが話すだろう」と考えるのではないでしょうか。
これが、まさに社会的手抜きです。
本来は、一人一人が発言し、会議の内容を充実させなければならないところが、誰かに頼ってしまった結果、何もしなくなってしまうんです。
5限目:社会的抑制・社会的促進の違い
次に、社会的抑制と社会的促進という考え方についてわかりやすく解説していきます。
選択肢の「5」に注目してください。
5.社会的抑制は、単純な課題を行うときに発生する。
この選択肢は、不正解です。
そもそも、社会的抑制とは何なのでしょうか。
社会的抑制とは
個人で課題を遂行する前に比べ、集団で課題に取り組んだ方が課題の早さや量が抑制される現象を指します。
ここで、自分の部屋を掃除することを例に考えてみましょう。
自分の部屋を掃除するのであれば、一人で掃除を進めたほうが早く進みますよね?なぜなら、散らかっているゲーム機や本などを本来どこに仕舞えばよいのか?をわかっているのは本人だからです。
しかし、これを5人でやるとどうなるでしょうか。
掃除を進めるたびに、ゲーム機は白い収納箱の中に、その本は茶色の本棚に、・・・など、いちいち指示をしなければならないですよね。これって、一人でやったほうが早いですよね。
これが、社会的抑制の一例です。
また、社会的抑制とは別に、社会的促進という考え方もあります。
それぞれの違いをまとめると、次のように言えます。
社会的促進と社会的抑制の違い
単純な課題を進める時に他者の存在がいる→社会的促進をもたらす。
複雑な課題を進める時に他者の存在がいる→社会的抑制をもたらす。
単純作業であれば、あるほど、他者の存在で作業がはかどりやすくなります。
まとめ
最後に今回のテーマである「集団浅慮が働いた事件とは?社会的手抜き、社会的抑制について解説」のおさらいをしておきましょう。
1.チームの業績は、目標達成の明確な道筋、戦略戦略を実現できる人材、チームワークの強さにより決まる。
2.遂行するタスクが多様なスキルや判断を必要とする場合には、個人よりもチームの方が高い業績を上げることができる。
3.リーダーを中心にまとまりのよい集団であっても、集団浅慮は発生する。
4.社会的手抜きは、集団の作業においては発生する。
5.社会的抑制は、複雑な課題を行うときに発生する。
福祉イノベーションズ大学では、社会福祉士国家試験の合格に向けて試験に出る箇所を中心に、情報発信をしています。
「参考書や問題集を解いただけではわからない…。」という方は、今後も参考にしてください!
今回の授業は、以上です!
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